中学校の定期テスト「削減」の波、広がる――神奈川県の公立中における現状

 近年、神奈川県でも、中学校での定期テストの削減・廃止の動きが広がっています。

 今回は、高校受験ステップの塾生がいる県内 359の公立中学校における定期テストの実施状況を調査し、その実態をまとめました。また、定期テストを完全に廃止した学校、回数を大きく減らした学校の現状についてもお伝えします。

(高校受験ステップニュース第386号(2023年6月発行)より)

目次
  1. はじめに
  2. 3学期制の中学を中心に、定期テスト削減の流れ
  3. 横浜市の中学校では年4回実施が主流に
  4. 定期テストを廃止・削減した中学校の現状
  5. ステップの対応
  6. 【参考】調査した全中学校の定期テスト実施回数一覧
  7. 【参考】神奈川県内359の中学校の定期テスト実施回数一覧
  8. 横浜市
  9. 川崎市(2学期制)
  10. 相模原市(3学期制)
  11. 藤沢市(2学期制)
  12. 鎌倉市(3学期制)
  13. 逗子市・葉山町(2学期制)
  14. 横須賀市(2学期制)
  15. 三浦市(3学期制)
  16. 茅ヶ崎市(2学期制)
  17. 寒川町(3学期制)
  18. 平塚市(2学期制)
  19. 大磯町・二宮町(3学期制)
  20. 小田原市(2学期制)
  21. 大和市(3学期制)
  22. 座間市(3学期制)
  23. 綾瀬市(3学期制)
  24. 海老名市(3学期制)
  25. 厚木市(3学期制)
  26. 伊勢原市(3学期制)
  27. 秦野市(3学期制)
  28. 愛川町・清川村(3学期制)
  29. 山北町・松田町・開成町(3学期制)
  30. 南足柄市、中井町、大井町(2学期制)
  31. 湯河原町・箱根町(2学期制)

はじめに

 ご存じの方もいらっしゃると思いますが、そもそもは’14年に東京都の千代田区立麹町中学校の校長になられた工藤勇一先生が、同校でさまざまな改革を行われました。宿題を出さない、担任制をやめる…それらの改革の1つの柱が「定期テストの廃止」でした。この改革がメディア等で大きく取り上げられ、話題になったのは、まだ記憶に新しいところです。

 工藤先生は6年間、同校でさまざまな取り組みを行われた後、現在は横浜創英中学・高等学校(横浜市)の校長を務めていらっしゃいますが、麹町中から生まれた流れは、全国に広がっていきました。

 神奈川県でも、昨年ぐらいから定期テストの削減・廃止を行う中学校が増えています。鎌倉市などでは、以前のように年間5回の定期テストを行う公立中学校はほぼ皆無となっています。

 工藤先生自身は、定期テスト廃止について、新聞のインタビューで「中間・期末テストを廃止し、再チャレンジできる『単元テスト』を導入。再チャレンジをすると前回のテストの点数はリセットされる仕組みにしたところ、生徒たちは前回間違えたところを一生懸命勉強するようになり、成績が上がった」という風に述べられています。

 こうした再チャレンジの仕組みは一部の中学校では再現されていますが、踏襲されていない学校も多そうです。

 いずれにしても、「定期テストの削減や廃止」の動きは、今後も広がっていきそうです。
 そこで今回は、定期テスト削減の実態と、その際の勉強の仕方について取り上げてみたいと思います。

3学期制の中学を中心に、定期テスト削減の流れ

 各中学における定期テストの実施状況を調べるため、横浜市に38、川崎市に10、相模原市に9、その他の市・町に61ある高校受験ステップのスクールにアンケートを実施。「ステップの塾生が通う中学校は、年に何回定期テストを実施しているか」を、①3学期制(1〜3学期)と②2学期制(前期/後期)に分けて調査しました。
(→調査した全中学校の実施回数一覧はこちら。)

 まず①の3学期制の中学校です。横浜市・県央地域の学校が中心となっています。


 3学期制の定期テストは、1学期中間・期末、2学期中間・期末、学年末テストと年5回実施するのが従来のセオリーでした。しかし、今回の調査では年5回実施する中学校は34校と全体の2割程度になっています。

 3学期制の中学校では、これまでも中1の1学期中間テストを実施しない学校は多くありました。しかし、他学年や2学期の中間テストを中心に減らしたところが目立ちました。
 例えば1学期・2学期の中間テストを廃止し、各学期1回ずつ(年3回)定期テストを行う中学校は64校(ほか、変則パターンが1校)。海老名市・相模原市の調査対象の全中学校、厚木市・愛川町の多くの中学校がこれに含まれ、「中間テスト廃止」の流れが県央エリアで広まっていることが分かります。

 また、5月にある1学期中間テストを実施せず、年4回実施としている中学校は59校。こちらは7割以上が横浜市でした。

 一方で、定期テストを完全に廃止しているのは大船中学校・腰越中学校(ともに鎌倉市)、林中学校(厚木市)、愛川東中学校(愛川町)、緑中学校(清川村)の5中学でした。これらの中学校では、単元ごとの小テストや提出物、授業態度などを総合して成績がつけられる模様です。

 続いて、2学期制の定期テスト実施状況は右下の②のようになりました。

ステップ生が通う神奈川県内の2学期制の中学校における定期テスト実施回数グラフ。横浜市(青葉区・旭区・泉区・磯子区・金沢区・港南区・港北区・栄区・瀬谷区・都筑区・鶴見区・戸塚区・西区・中区・保土ケ谷区・緑区・南区)、川崎市、小田原市、逗子市、茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、横須賀市、葉山町、湯河原町、中井町で、ステップ生がいる2学期制の193の中学校が対象。

 2学期制は、横浜市・川崎市のほか、湘南地域の中学校を中心に採用されています。2学期制の場合、前期中間・前期期末、後期中間・後期期末の年4回の定期テストが標準的です。

 グラフを見ると、先ほどの3学期制の調査と異なり、ほとんどの中学校が年4回すべて実施していることが分かります。178校、割合にして9割以上の2学期制の中学校がこれまで通り前期・後期に2回ずつ定期テストを行っています。

 2学期制で回数を減らしている中学校は、年3回実施が11中学、年2回実施の中学が3中学。2学期制で定期テストを完全に廃止しているのは、緑園学園(横浜市)のみでした。

横浜市の中学校では年4回実施が主流に

 次に、ステップ生が通う中学校の数が多い、横浜市における定期テストの実施状況を見ていきます。
 調査対象の128中学のうち、3学期制・2学期制の中学校はおよそ半数ずつ。また、同じ区内でも2学期制・3学期制が混在しています。
 横浜市の定期テストの実施回数をみると、年4回実施の中学校が110校と最多でした。2学期制の中学では”セオリー通り”といえますが、5回実施が一般的な3学期制の中学では、テストの回数が減らされたことになります。

 具体的には、この年4回実施の110校のうち、3学期制は45校。うち43校が1学期中間テストを廃止し、その他のテストを減らしたのが2校となっています。一方、3学期制の中学校で、従来通り年間5回の定期テストを実施しているのは4校のみでした。


 このことから、横浜市内の3学期制中学校では、定期テストの回数を年間4回にする流れになっていると言えます。
 また、2学期の中間テストを中3のみ実施する南瀬谷中(瀬谷区)や、副教科のみ定期テストを行う小田中(金沢区)といった、変則的なパターンも一部見受けられました。

定期テストを廃止・削減した中学校の現状

 ここまでお伝えした通り、3学期制の中学校を中心に、定期テストを削減する流れがあります。多数派ではないものの、中には定期テストを完全に廃止し、単元別テストや提出物、授業態度などで成績をつける中学校もありました。
 そこで、定期テスト廃止、または回数を大きく減らした中学校の現状について、近隣のステップのスクールに取材しました。
(以下、青字は近隣スクール教師の談)

’22年度から定期テストを廃止した鎌倉市立腰越中学校の場合

 昨年度より定期テストがなくなり、今年で2年目になります。
 定期テストの代わりに、朝の時間や授業時間内で10分程度のミニテストを頻繁に行い、その結果が成績に反映されます。
 ミニテストの難度はそれほど高くなく、授業をしっかり聞いていれば解けるレベル。ある生徒は「範囲が狭いし内容も易しいから、直前に勉強すれば得点できます」と言っていました。
 実際、定期テストを行っていた頃より、多くの生徒の内申点が上がったように思います。

 ただ、学校のテストが易しくなった一方で、模試などの実力テストでは苦戦する様子も見られます。

’22年度から定期テストを段階的に廃止した鎌倉市立大船中学校の場合

 大船中学校では、昨年から段階的に定期テストの科目を減らしており、今年は完全にテストを行わなくなりました。
 その代わりに「単元テストを年間を通じて実施し、達成度をはかる」ということで、科目によっては単元テストの年間実施予定表まで配られています。しかし実状は、授業が思ったように進まず、予定表の通りにはテストができていないケースも見られます。

 さらに、授業中の細かいところまで単元テストに出される場合もあるので、先生の言葉を聞き漏らさないような生徒は点が取れるものの、マメさが欠けがちな生徒はいま一歩得点できていない状況です。

 また別の科目では、範囲を定めない、「完全な実力テスト」が行われたりして、今のところは”科目の先生次第”という印象。
 単元テストの日程や頻度が科目ごとに統一されていないため、生徒はどう対策したらいいのか困っているようです。

’23年度から定期テストを廃止した厚木市立林中学校の場合

 今年から定期テストがなくなった林中は、年度の初めに、月ごとに行う単元テストの内容や、提出するレポートの内容が書かれた「年間の実施計画表」が科目ごとに配られました。スケジュール通りではないそうですが、すでにレポート提出や単元テストが行われています。
 レポートは授業内容をまとめたり、感想を書いて提出。
 単元別テストについては、基本的に中学校から配布された「ワーク」から出題されるため、生徒は対策がしやすいようです。

 「定期テストがなくなって困っている」という声はあまり聞きませんが、中には単元テストやレポート提出が毎月あることを負担に思う生徒もいるようです。

学期に1回ずつ定期テストを行う横浜市立戸塚中学校の場合

 3学期制の戸塚中学校は、今年度から、「中間テストを廃止し、定期テストは学期末のみ行う」形式に変わりました。
 もともと戸塚中の定期テストは難度が高めで、生徒からは「難しいテストが、出題範囲が広がってもっと難しくなる」「一発勝負になり、挽回のチャンスが減ってしまった」といった困惑の声が聞かれます。

ステップの対応

 今後、定期テスト廃止の流れは、さらに広がる可能性があります。
 腰越中や林中のケースにあるように、授業の復習を前提とした単元別テストは、範囲が広くなく対策しやすい一方で、短期記憶で乗り切れてしまうため、従来の定期テスト対策のように「それまでの復習に、一定の時間をかけて集中して取り組む」という期間は少なくなります。

 ステップでは高校入試に向け、内容を定着させられるよう、各地区の状況を把握し臨機応変に対応していきます。
 また、定期テストを早くから廃止した地区の事例やノウハウをスクール間で共有していますので、それらをさらに効果的に活かしていきます。

 一方、定期テストが2回~4回に削減された学校では1回あたりの重みが増します。
 その場合、試験範囲も当然広くなってくるので、以前より周到な準備が必要になってきます。
 日常的な中学校での単元別テストやミニテスト等は、中学校でのふだんの授業によく集中し、かつステップでしっかり学習することで、臨機応変に対応できると思いますが、数少ない定期テストの重要性は増しますので、一層計画的に対処していく必要がありそうです。

【参考】調査した全中学校の定期テスト実施回数一覧

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