1. ステップ トップ
  2. ニュース詳細
2014年10月10日

大学受験 上智大学「TEAP利用型入試」について

 皆さん、最近、話題になっている「TEAP」を知っていますか?
 TEAPとは上智大学と英検協会が共同で開発した「大学で必要な英語運用力を測定するテスト」です。上智大学では来春よりTEAPを利用した新しい入試がスタートします。難度は従来の上智の試験に比べればそれほど高くなく、しかも基準スコアさえ満たせば入試で上智の難しい英語を免除されるという利点があります! 

■ TEAPの基本情報 ■
● 試験内容 ●
Reading test :マークシートによる択一選択方式(70分/100点満点)
Listening test:マークシートによる択一選択方式(約50分/100点満点)

Writing test :解答用紙への記入方式(70分/100点満点)
Speaking test:1対1の面接方式(約10分/100点満点)
※上智大の2015年度TEAP利用型入試において、WritingとSpeakingは必要ありません。
※難度の目安…英検準2級~準1級程度

● 2014年度 試験日程・会場 ●
・試験日:12月14日(日)
・申込期間:10月1日(水)~11月14日(金)
 ※申し込む際に、TEAP IDの登録が必要です。事前にカラーの顔写真データを準備しよう!
 ※TEAPの受験資格は高3生以上です。

・試験会場:全国7都市/7会場 ※東京会場は上智大で受験となります。


詳細はコチラ⇒日本英語検定協会 申込は各自インターネットにて

■ 基準をクリアすれば、スコアは入試に反映されない ■
 上智大学で来春より始まる「TEAP利用型入試」。最大の特徴は、事前にTEAPを受験し、志望する学科の基準スコア(詳細は下記の表を参照)を満たせば、入試で英語が免除されることです。
 注目すべきは、出願に必要なスコアさえ取れれば、スコアそのものが入試に反映されない点。つまり、文系なら国社勝負に、理系なら数理勝負に持ち込めるということです。英語を得点源にしづらい生徒にとっては、もってこいの受験です。


■ 入試では「リーディング」と「リスニング」が対象 ■  
 TEAPは「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を測るテストですが、入試で必要なのは、「リーディング」と「リスニング」の二分野。この二つのみ選択すればOKです。
 「リーディング」は70分で100点。問題量も多く、資料を読みとく問題など、内容やレベル的にセンター試験に近いように思えます。このため、短時間で多くの問題を解く練習が有効でしょう。
 また、センターにはあまり見られない文法問題も多く出されます。ただし、難度はそう高くはありませんので、ステップの文法の授業を受講しておけば、それほど苦戦しないと思います。
 「リスニング」は50分で100点。スピードは割とゆっくりで、一問一問が短く、聞き取りやすいものが多い印象でした。ただし、50分間、集中力を維持することは大変ですので、事前に、英検などのリスニング問題を50分間聞いてみる練習が有効かもしれません。

■ 初年度はチャンス ■
 今年度、上智大の「TEAP利用型入試」で必要なスコアは最も高い外国語学部英語学科で200点満点中145点、理工学部では90点です。問題のレベルを考えれば決して高い数値ではありません。今年の結果を考慮して、来年から基準スコアの調整がある可能性もあり、そういった意味でも初年度の今年はチャンスと言えます。
 また、理工学部の場合、今までとは違い、理科を2科目受験できるのはTEAPを受けた生徒に限定されることになります(学科別試験では理科1科目選択です)。注意しましょう。

■ 対策講座で形式に慣れよう ■
 ステップでは「TEAP試験」に向けて、類似した形式の読解問題と、リスニング問題を用いた短期集中のTEAP対策講座を実施します。独特の出題形式ですので、まずは受講して問題に慣れるところから始めましょう。


TEAP対策を考える ~第1回、第2回を実際に受験してきました~


①TEAPとは②どのような問題が出されるか③どう解くか

 大学受験ステップ英語科のMr.mountainです。今春から上智大学で導入されるTEAP利用型入試。そのTEAPを実際に2回受験してきました。
 今回は、2回の受験を通した感想とともに、TEAPについて詳しくお伝えしていきます。参考になれば幸いです。
以下の画像は私のTEAPのスコアです。2回目は満点でした。


①TEAPとは


 センター試験以降、一芸入試、AO入試、全学部入試と、入試形式が多様化してきましたが、今回は上智大学と英語検定協会が共同で開発したTEAPという新しい英語の試験が登場しました。これはTest of English for Academic Purpose「学術的目的のための英語の試験」という名前の通り、高校生が大学に入った場合にどの程度英語をコミュニケーション、学習のツールにできるかを測る、という目的の試験です。出題内容は後述しますが、コミュニケーション能力を測るという狙いから、従来の入試英語とは一線を画す問題形式となっています。公式には英検準2級~準1級レベルとされています。

 これまでの英語の試験とのシステム上の最大の相違は、この試験が他教科と独立して、高3の7月、9月、12月に行われる、という点です。(受験資格は高校3年生以上です)しかも、このテストの得点は順位付けではなく、TEAP利用入試を採用している大学(*注1)が学部・学科ごとに設定した基準点(*注2)を越えればよい、という資格試験的扱いになっています。つまり、3回のTEAP試験のうちで、基準点を越える点を取れば、その生徒は2月の本試験において英語は受ける必要がなくなり、基本的には文系学部は国語・地歴の2教科の得点、理系学部は数学と理科の2教科(上智大学理工学部は理科が2科目必要)で合否が決まることになります。これにより英語抜きの受験、という4年制大学の一般入試としては大変珍しい現象が起こることになります。英語が苦手で他の2教科の足を引っ張っている受験生は3回のTEAP試験のうち、1回、1点でも基準点を越えれば2月の入試において英語以外の勝負に持ち込む、という作戦が立てられます。一方、英語が得意な受験生は秋までのリードで英語免除を勝ち取り、冬は他の2教科に集中する、という作戦が立てられる、というメリットがあります。(もちろん、他大学受験を考えればTEAP試験の後で英語の勉強が不要になるとは言えませんが。)

 ちなみに、問題冊子は回収されますので自己採点はできませんし、計110問の配点も不明ですので、試験後2週間ほど経ってから行われる点数発表まで自分の点数は推測も困難です。

(注1)
2015年度入試(2015年春の入試)で採用する大学
上智大学(国際教養学部以外の全学部学科)・立教大学(自由選抜入試)・関西大学(AO入試・指定校推薦入試)・立命館アジア太平洋大学(AO入試)・中央大学(英語運用能力特別入試・自己推薦) 筑波大学が検討中 
⇒詳細はhttp://www.eiken.or.jp/teap/group/list.html

(注2) 


上智大学ホームページ⇒http://www.sophia.ac.jp/static/teap/

②どのような問題が出されるか?


 では、このTEAPはどのような問題が出されるか、形式面を見てみましょう。現在、TEAPに関しましてはテキスト・問題集類が一切存在せず、TEAPのホームページ(http://www.eiken.or.jp/teap/construct/)にsample問題(ReadingのPDFファイル及びListening用音声ファイル)が掲示されているのみです。また受験者にも問題の持ち帰りは許されず、試験問題のメモ等も一切禁止です。今回はこのsample問題と私が7月と9月の試験会場でこの試験を受けた際の記憶に基づいた記述となることをご了承ください。

 TEAPは2部構成で前半がReading Part、後半がListening Partです。センター試験と同様、全て選択肢から正解を選び、マークシートに解答を記入する方式で、筆記問題(和訳・英作文)は出題されません。(*注) 形式面の最大の特徴はこのListening Partが50分で50問出題される、という点です。センター試験でも2006年度からリスニング問題が出題されるようになりましたが、こちらではリスニング解答時間は30分で、この中に日本語による解答法の説明が含まれ、英文は2回繰り返されますので初めて耳にする英語を聞く時間は10分程度です。国公立大学の二次試験の英語の問題では、東京大学(全学部)の30分のリスニング問題が異彩を放っており、英文もハイレベルで長いものですが、これも2回繰り返されるのが救いで、1回目に質問を聞き取り、2回目に答を探しながら英文を聞く、という作戦が使えます。これに対し、TEAPでは放送される英文は1回のみで、大問5つのうち3つでは設問が問題冊子に印刷されておらず、英文の後に読まれる設問を聞くまでは何を答えるべきか分かりません。聞き取るべき情報を絞って聞くわけにいかず、英文を始めから終わりまで集中して聞かねばなりません。これが筆記試験70分に引き続き、休憩なしで行われますから、かなりの体力、集中力が必要となります。日ごろからラジオ講座や音声教材で英語の音を耳にする習慣を付けておくべきことは言うまでもありません。

 形式面の特徴の2番目はReading Partの語彙の難しさです。Reading Partは70分で60問、とセンター試験の80分で50数題(ここ10年間50~55題の間で毎年変わっています)に比べると時間が10分短いのに問題数が多いので、あまりじっくり考えて解答する余裕はないと言えますが、それ以上に英文で用いられる英単語が明らかにハイレベルである点が目に付きます。先述のように公式には英検準2級~準1級レベルとされていますが、TEAPの英文の語彙レベルは1級レベルに近く、上智大学の本試験並みと言えます。第1回、第2回の試験で使われた英文ではexpertise「専門知識」, vandalize「破壊する」, herbicide「除草剤」, turnout「選挙の投票者数」, laud「称賛する」, take issue with「~と論争する」, mandatory「強制的な、必修科目の」, precedent「前任の」などが単語帳に載っていない語彙で、さらにedge「端」→「力、特質」, hat「帽子」→「地位」, credit「評判、信用」→「(学校の)単位」など通常用いる意味とは異なる意味で使われる単語も目立ちました。このようなハイレベルな語彙にも語注は一切与えられません。

 3番目の特徴は、グラフの多用です。Reading PartではPart 2Bの5問が全てグラフを見て解答する問題、最後の長文にも英文の内容と与えられたグラフを比べて答える問題が含まれています。Listening PartでもPart 1Cの5問が全て放送される英文の内容と合っているグラフを選ぶ問題、最後のPart 2Bにも1つグラフが絡む問題が出題されますので、合計110問中の約1割がグラフに関係する、という英検の問題とも異なる、非常に珍しい形式です。英語からデータを素早く読み取る・聞き取る、という能力は大学での研究・調査に重要、ということで重視されているようです。英語の数字の聞き取りが苦手、グラフの読み取りが嫌い、という受験生には少し辛いところです(絵や表は出ていません)。

 4番目の特徴は扱われる英語の題材です。Test of English for Academic Purpose「学術的目的のための英語の試験」という名の通り、学問、大学関係の話題が中心的に扱われます。第1回、第2回の試験ではReading Partで「自然科学(環境問題・生物学)・人文学(地理・歴史)の解説」、「学生向けのお知らせ」、Listening Partで「大学生同士の会話」、「大学での講義」、「大学職員の学生へのアドバイス」 などが扱われています。物語文・随筆の類は出題されていません。受験生が大学に入学後、外国人教授の授業を受けたり、留学をしたりする場合に必要となる英語力を確認する、という狙いがはっきりと感じられます。これは同じく音声重視の試験でも、ビジネス英語主体であるTOEICと大きく異なる点です。

 最後に、純粋な文法問題の少なさが挙げられます。Reading Partの最初の20問が空所補充4択問題ですが、「仮定法」「関係詞」「準動詞」といった純粋な文法項目は問われず、大部分が単語の正しい使い方や、形や意味が似ている単語の正確な使い分け方を問う、いわゆる「語法」問題です。一般の入試の文法問題でおなじみの整序問題、誤文訂正等は出題されません。この、「規則に関する細かな知識よりも自分で表現する際に重要になる単語の語法に関する知識を重視する」、という傾向は近年、センター試験にも見られ、センター試験でも年々純粋な文法知識を問う問題は減少しています。とはいえ、「仮定法」「関係詞」「準動詞」などの知識なしに正しい英文の解釈は不可能なはずで、リスニング問題で読まれる文でも「助動詞」や「比較構文」を使わない英文はあり得ません。決してTEAPでは文法の知識は要らない、ということではありません。誤解のないようにしてください。 

※注TEAPにはReading, Listening以外にWriting, Speakingの試験も用意されていますが、現時点ではこちらは大学受験では利用されていません。

③どう解くか


 ではこのTEAP試験で大学側が要求してくる基準点をクリアするためにはどのような解法が有効で、どのような対策が必要なのか、考えてみましょう。設問ごとに見て行きます。

《Reading Part》
○Part 1
[ 空所補充4択問題 20問 ]
 前記のように、語法を問われますから、単語帳で語彙を増やす際に、意味はもちろんですが、動詞なら主語は人か物か、自動詞か他動詞か、他動詞ならどのような目的語が付くか。名詞なら可算名詞か不可算名詞か、類義語は何か。形容詞ならどのような名詞を修飾するか、類似の形容詞との相違は何か。こういった点を辞書の解説や例文を見て考える癖を付けることが有効です。

○Part 2A
[ グラフに合った英文を選ぶ問題 5問 ]
 グラフのタイトルや軸の部分に書かれた項目名も大きなヒントです。数字が絡んだ紛らわしい選択肢も多いので、グラフの内容をさっと見てから選択肢を順番にチェックしてグラフに合うかどうか確認する、という地道な作戦が有効でしょう。

○Part 2B 
[ 短い英文(手紙・メール・メモ・広告)を読み取る問題 5問 ]
 英語の手紙やメールは慣れていない人が多いと思います。「誰が」「誰に」「何のために」書いたメッセージか、文中にマークを入れながら読むのが良いと思います。(問題冊子は回収されますが書き込みは自由です。)

○Part 2C
[ 短い英文(5-6行の解説文)を読み取る問題 10問 ]
 これは先に設問を読み、要求されている情報を頭に入れてから本文を読み答えを探す、というのが効率良い解き方でしょう。ここでも紛らわしい単語が選択肢に含まれたり、本文中の紛らわしい意味の単語の同意語を問われたり、と、語法の知識が要求されます。Part 1と同様の対策が必要です。

○Part 3A 
[ 20行程度の英文中の空所補充 英文2つ、それぞれに空所4か所 計8問 ]
 文と文、段落と段落の関係を表す語、いわゆるディスコースマーカーと、文意に合った名詞を中心に問われます。英文の内容を読み取らねば解けない問題ですから近道はありません。文頭からしっかり読んでいくしかないでしょう。内容は解説文中心で、レベルと文の長さからしてもここはしっかり得点するべき部分です。

○Part 3B  
[ 長文読解(500 ~600語) 英文2つ、それぞれに設問6 計12問 ]
 もっとも入試問題らしい問題で設問はすべて内容確認問題です。文中に空所や下線はなし。設問はほぼ本文の順番なので、1段落読んで1問解いて次の段落へ、という読み方もできますが、文全体のテーマを問う問題もあるので段落間の関係を見失わないようにしなくてはいけません。段落ごとのテーマを段落の横にメモしたり、キーワードに下線を引いたり、読み方に工夫が必要でしょう。先述のように単語レベルはハイレベルですから、単語帳・熟語帳に載っている語彙は確実に覚え、テキストの英文中の未知の語彙は前後関係で意味を推測した後に辞書で確認する、という地道な努力が必要でしょう。

《Listening Part》
○Part 1A 
[ 短い会話と設問を聞いて正解を選ぶ問題 10問 ]
 基本的に男女2人の短いやり取り(第2回では3人のやり取りも一つ混じっていました)で英検等でおなじみの平易な問題。このレベルならウォーミングアップ扱いにしないといけません。

○Part 1B 
[ 短いmonologue(一人の発話)と設問を聞いて正解を選ぶ問題 10問 ]
 短い講義、ラジオのスポット放送のような様々な内容の英文が放送されます。会話体に比べ、理路整然とした内容のものが多い分、内容は理解し易いと思いますが、単語のレベルは会話より上がります。

○Part 1C
[ 英文を聞いて内容に合ったグラフを選ぶ問題 5問 ]
 先述のようにTEAPの特徴と言える問題。前の2問は英検やセンター試験の問題集でも練習できますが、この形のリスニング問題は他になかなかないので、練習はしにくいと思われます。通常のリスニング問題で数字をしっかり聞き取る練習をし、英文が流れる前にグラフに目を通してタイトルや軸の項目名からどのような英文か予想を立てる習慣を付ける必要があるでしょう。

○Part 2A
[長めの対話と設問を聞いて正解を選ぶ問題 会話が3つ それぞれに設問3つ 計9問 ]
 会話形式ですが、気楽なおしゃべりではなく、学術・授業関係の堅い内容の対話、が中心です。幸い、前の3題と異なり設問が問題冊子に印刷されていますから、問題の解答法の英文が流れている20秒ほどの間にこの設問をしっかり読み、解答に必要な情報をあらかじめ頭に入れて英文を聞くテクニックが有効です。対話を聞いてから問題が読まれ、解答する時間が10秒ありますが、この時点で初めて問題を知って答を探すのでは遅いでしょう。

○Part 2B
[ 長めの解説文と設問を聞いて正解を選ぶ問題 英文が4つ それぞれに設問4つ 計16問 ]
 前の2A同様、設問が印刷されているのが救いです。やはり解答法の説明が英語で流れますのでこの時間を利用して設問に目を通せるかどうかでかなり点数が変わる気がします。
先述のグラフに関しては、ネット上に公開されているSample問題と第1回試験では英文の内容から適切なグラフを選ぶ形でしたが、第2回ではグラフが英文の内容を補充する形で提示され、英文を読むヒントになっていました。

 ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が日本人の英語力を痛烈に批判していましたが、産官学で実用的な英語を求める声は強まっています。センター試験廃止を機に、英語教育、入試英語も実用英語を主体としたものに大きく様変わりすることはほぼ確実と思われます。TEAPは本年が初年度ですから、今後多少の軌道修正は考えられますが、今後、採用する大学は増えるものと予想されます。せっかく受験勉強で多くの時間と労力を割いた英語が将来役に立たない、というのは確かにもったいない話です。日本の国語を英語にする、というのはさすがに現実離れしていますが、日本人が受験勉強で身に付けた英語を駆使して世界を股にかけて活躍する、日本のことを海外に積極的に発信し国際理解を深める、このような社会は実現可能だと思います。そんな日の到来を夢見つつ、TEAPの紹介を終わりといたします。